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バンコクテロの犯行声明がいまだ発表されない理由

2015年8月17日19時ごろ(現地時間)、タイの首都バンコク中心部にあるヒンズー教寺院エラワン廟付近のラチャプラソン交差点で、オートバイに仕掛けられた爆弾が爆発した。

現在分かっているだけで死者20人、負傷者125人を数える。

負傷者の中には東京海上日動火災現地法人に出向中の安藤紘太さん(31)も含まれ、重体と伝わっている。

 

一方、18日13時半ごろ(現地時間)には、市内を流れるチャオプラヤ川のタクシン橋付近の川船発着場で再び爆発があった。

怪我人はいない。

 

2つの爆発事件で使われた爆弾は、いずれもTNT火薬をパイプにつめたタイプの爆弾 = 即席爆破装置(IED)で、現地警察は連続テロとの見方を示している。

また、17日の爆発事件現場付近の防犯カメラに写りこんでいた、不審な動きをする黄色いシャツを着た男の写真を公開。

この男を実行犯とみて、捜査に当たっている。

 

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タイは宗教的には、人口の94%が仏教徒で、5%がイスラム教徒と圧倒的に仏教徒が多い。

政治的には、民主政権と軍事政権が時を置いて交代してきた歴史をもつ。

1992年から民主政権が続いたが、2006年タクシン政権時代に軍部がクーデタをおこし、軍事政権に戻った。タクシン派は2011年の総選挙で政権を奪還したが、2014年5月には再び軍部がクーデタをおこし、軍事政権に戻り、プラユット暫定首相が実権を握っている。現在は比較的安定した状態であったという。

 

 ふつうのテロ事件の場合、犯行グループが何らかの声明が通例であるが、今回の爆発事件はいまだ犯行声明が発表されていない。

 

考えられるのは2つの可能性だ。

1つは、イスラム教過激派「イスラム国」のウェブ戦略などに影響を受けた現地の若者が起こしたホームグロウン型のテロの可能性。実行犯が稚拙であって、犯行声明を出すに至っていない。

もう1つは、実はこれはテロではなく、タクシン派や、タイの少数民族ウイグル族の内部抗争である可能性。この場合は、犯行声明を出す必要がない。

 

18日には、プラユット暫定首相が内閣改造の新閣僚名簿をプミポン国王に提出した。

政治の方向性に不満をもった人物の仕業かもしれないが、いずれも憶測に過ぎない。

現地警察の捜査を待とう。