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朝鮮半島で高まる緊張 これまでの経緯

朝鮮半島で緊張が高まっている。

事の発端は、2015年8月4日に非武装中立地帯で起きた、地雷爆発事件だ。

 

北朝鮮と韓国の間には「国境線のようなもの」があるが、実は、1953年7月27日の朝鮮戦争休戦協定で引かれた軍事境界線(MDL Military Demarcation Line)であって、国境線でも何でもない。

北朝鮮と韓国は、いちおう建前上は、「休戦」しているだけであって、朝鮮戦争は「終結」していないのだ。

 

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今回の地雷爆発事件が起きたのは、その軍事境界線の南北それぞれに約2kmの幅で設定された非武装中立地帯(DMZ Demilitarized Zone)である。

ここは地雷原になっており、民間人は普通立ち入ることができないが、両軍の兵士は互いの監視のため立ち入りが許可されている。

もちろん、普段の巡回コースには地雷がないことが確認されているのだが、その普段の巡回中に、今回の地雷爆発事件があった。

 

8月4日午前7時35分ごろ、京畿道坡州市の非武装中立地帯で見回り中だった韓国軍の下士官2人が、軍事境界線から韓国側に440メートル入った地点の鉄柵付近で地雷を踏んだ。

爆発は3回。

被害を受けた兵士の1人は右足を、もう1人は両足をそれぞれ切断する大けがを負った。

 

韓国側は米軍と共に調査を進め、最後に巡回した7月22日には異常がなかったことなどから、最近になって北朝鮮軍によって埋設されたと結論し、8月10日、この事実を公表。

北朝鮮を強く非難する声明を出すとともに、拡声機を使った軍事放送を11年ぶりに再開する報復措置をとった。

この軍事放送の内容の詳細は不明だが、金正恩体制を批判するものと推測されている。

 

軍事放送再開を受け、北朝鮮の国防委員会政策局は14日、韓国側の主張は「謀略と捏造」であるとする談話を発表。

20日には、南北の軍事境界線付近で砲撃戦が勃発し、北朝鮮は「22日夕刻までに軍事放送を中止しなければ、軍事的行動を取る」と、国営メディアを通じて一方的に宣告。

翌21日には「準戦時状態」を宣言した。

 

韓国側の世論も強硬論に傾きつつあったが、軍事衝突を回避したい両政府は、22日18時半から、軍事境界線にある板門店で会談を開始した。

会談には韓国側から金寛鎮=大統領府国家安保室長、洪容杓=統一相が、北朝鮮側からは黄炳瑞=軍総政治局長、金養建=朝鮮労働党統一戦線部長が出席。

北朝鮮側は「軍事放送の中止」、韓国側は「地雷爆発事件の事実認定」を求めているものと見られるが、交渉は妥結せず、23日早朝に一時中断。

23日15時より、会談が再開されている。

 

8月4日の地雷爆発事件の背景には、アメリカと韓国が最近行った合同の軍事訓練に対する北朝鮮の懸念があるとみられる。

また、今回、北朝鮮が「軍事行動」の可能性まで告げて、強硬に対処したのは、それだけ北朝鮮の国情が悪く、韓国側の宣伝放送が北朝鮮に大きな打撃を与える可能性があるということだろう。

もちろん、北朝鮮お家芸の「瀬戸際外交」という伝統を踏襲しているにすぎないのかもしれないが。

 

一方、韓国側でもこれまでにない強硬な姿勢を取っているのは、これまでセウォル号事件やMERS問題、あるいは対日政策で強硬になりきれず、信頼を失いつつあった朴槿惠政権の支持率回復方策の一環であるという、うがった見方もできるだろう。